横浜と秋葉原にて

新幹線の自由席券を買って、ちょうど駅に滑りこんで来たひかりに飛び乗った。席に座って一息ついていると、検札に来た車掌にここが指定席であることと、ひかりは新横浜に止まらないことを告げられる。恥かしい気持ちを隠して努めて冷静にしかしすごすごと自由席車両に移動し、名古屋で降りて後続ののぞみに乗りかえた。

夕方、新横浜に到着。駅ちかくのシティホテルにチェックインする。暇だったので、崎陽軒で海老そばを食べた後、見慣れない路線図を頭に叩き込んでから一度行ってみたかった秋葉原に出かけた。目的は買い物ではなく趣味の人間観察。アニメ美少女や声優らしきポスターが溢れる店を選んで、フロアを順々に見て回る。

京都のアニメイトごときでおたくを知ったつもりになっていた自分がいかに生ぬるい認識であったかすぐに理解できた。まず年齢層が幅広い、というか高い。ファッションセンスは皆無。面妖な顔立ちの男たちがエロ漫画ブースに溢れている。これが本場か! と言い知れぬ興奮を覚え、怪しい店を次から次へとハシゴする。これが大量消費社会のひとつの最終形態なのか。京都の片田舎に住む自分には想像を絶する欲望うずまく世界だった。いわゆる本当の非モテがどういったものなのか僕はまるで分かっていなかったのかもしれない。

翌日は午前から友人の式と披露宴に出席した。型どおりのセレモニー。というか型どおりに済ませることに意味があるのだろう。幾度も出席した過去の披露宴と何も変わるところがない。新郎新婦の出会いがネットであることには一言も触れられなかった。披露宴の料理は少食の自分にはいつも多過ぎるので、少しずつ残してメインディッシュに備える。どうにか乗り切れた。新郎の父親のスピーチが良かった。型通りの挨拶のあとに、余談ですがと断りを入れた後、自分が若い頃麻雀にハマって雀荘から雀荘へ渡り歩いていたこと、その影響で子供も無類の麻雀好きになったというエピソードを披露。ちょっとした逸脱とユーモア。場内は笑いに包まれ拍手喝采だった。