記憶のむこう

自転車のうしろに彼女を乗せたときの僕の腰に手を回している彼女の感触。屈託のない笑顔だったり、何気なくとりとめのない休日の瞬間。もう戻らない過去が頭をかすめることがある。もっと早くに、もっと信じてもらえるように努力していたら違った未来が待っていたかもしれない。後悔に泣いて苦しむ日々は過ぎた。でも過去をいきなり切り捨てられるほど強くない。未来だけを見つめて、希望だけを抱いて生きられるのだろうか。好きだった。大好きだった。気づくのが遅すぎた。もう過去のことなんだ。後悔を、記憶を捨て去ることなく、でもいまを見つめて、いまここにある気持ちを信じるしかない。幸せがなんであるかなんてわからない。でも前よりすこし強くなったのは君が毅然とした態度を取ってくれたおかげだよ。つらい思いをさせたね。ごめんね。ありがとう。