仕事のなかの曖昧な不安

玄田有史仕事のなかの曖昧な不安』が文庫化されていたので読んでみた。様々な統計データが用いられているが、要するに本書の言いたいことは「深刻化する若年の雇用機会減少という状況は、中高年が維持する強固な雇用の既得権が背景にある」ということだ。若者の自立心や就業意欲の低下といった精神的な問題が原因なのではないと言い切っている。一貫して若者擁護の書である。「ウィーク・タイズ」や「自分で自分のボスになれ」という熱いエールも傾聴に値する。

しかしその後のニート本で広まったフリーターやニートなどにおける若年就労問題に対する世間の主流な理解は、皮肉にも「若者の自立心や就業意欲の低下といった精神的な問題」に置き換わってしまっているように見える。

仕事のなかの曖昧な不安―揺れる若年の現在 (中公文庫)

仕事のなかの曖昧な不安―揺れる若年の現在 (中公文庫)