資本主義のエートス

効率化を追求した先に噴出する最も非効率な事態。現代のアイロニー

こういう心性、こういうエートスが、人間の活動はたえず価値を生産しなければならない、それもつねに多く、より速やかに、つまりはより効率的に(!)、という強迫観念を生みだしてくる。(中略)<前のめり>の時間意識と強く結びつくとき、例の「時間は貨幣である」という言葉がもつ「道徳的訓戒」としての含みがあらわになるのであり、時間を無駄に使用することをひとつの損失として意識させるような一種強迫的な心性が発生する。
鷲田清一『だれのための仕事』P.32-33

では「ゆとり」や「スロー」はそのエートスへのアンチテーゼとなりえるか。否、それは形を変えた「価値の生産」に過ぎない。都合のいい答えはない。答えのない事態に対してタフでなければならない。