近所のおばあちゃん

陽が高くなったころに出かける。家を出てすぐのアスファルトの先に、杖代わりの買物カートを押す近所のおばあちゃんがスローモーションのように歩いてくる。彼女は僕に気づくと立ち止まり、じっと近づいてくる僕を見つめている。

──もう20年は前のことだろうか。小学生だった僕は悪友とふたりでプロパンガス倉庫のそばで、嬉々として紙ヒコーキに火をつけて次々に飛ばしていた。それを見つけたおばあちゃんはこっぴどく僕たちを叱った。あの頃からおばあちゃんはおばあちゃんだった。後日、学校でコワモテの先生に呼び出され僕たちはさんざんしぼられた。

今の彼女はまるでナウシカに出てくる大ババさまのようだ。ゆうに齢90は超えているんじゃないだろうか。すれちがいざま笑顔で頭をさげると、満面の笑みで応えてくれ何かしら言葉をかけてくれた。電車の時間がせまり急いでいなければ立ち話のひとつもしてみたかった。

ツバメのさえずりが耳に心地よい。じわっと汗がにじむ暖かい晴れの日。