クラッシュ ★★★★★

梅田で『クラッシュ』 (2005/米)を鑑賞。『ミリオンダラー・ベイビー』(2004/米)で脚本を手がけたポール・ハギス初監督作品。深夜のロサンゼルス郊外での交通事故を起点に、いくつかものエピソードが絡み合う嫌悪と情愛に満ちた群像劇。

監督のポール・ハギスはこの映画のテーマを人種や階級ではなく、見知らぬ人間への恐怖だと語っている。その他者への恐怖や不安をベースに物語は駆動する。『クラッシュ』はたしかにアメリカ社会の人種問題を色濃く反映してはいるが、他者をお互いにラベリングし偏見を助長させる様には国境を越えた迫真性がある。またその偏見を単純に悪として扱っていない点において監督の思考の粘り強さが垣間見える。差別する者とされる者が固定的に描かれることはなく、物語が進むにつれて複雑な様相をみせる。その過程はテーマうんぬんを脇に置いてなお非常にスリリングだ。