みそ汁とレゾンデートル
正午に目が覚める。階下におりると、「携帯電話を少し借用します」という父の書き置きがパソコンの上に鎮座している。家族とはいえ、他人の私的個人情報の集積であるケータイを断りもなしに持って出かけるという、あまりにアナログな感覚に一瞬呆然とした。メールを盗み見るスキルもないだろうから別にいいのだが。
それより自分が作ったみそ汁に父が勝手に具を足して、無茶苦茶な味に変えてしまうことのほうが腹立たしく、そのことに文句をつけると、いつの間にかお互いの生き方のスタンスまで非難し合うという、明らかに滑稽なケンカが勃発。
些細な諍いが発端となって、日常生活のさまざまなズレへの違和を表出しあう場へと発展し、お互いの社会におけるレゾンデートルを問い詰め合うという、そのあまりにもあまりにな喜劇は身内ならではかもしれない。
そういえばレゾンデートルという競走馬がいたな。細江純子騎手がけっこう好きだった。
- 作者: 里中李生
- 出版社/メーカー: イーストプレス
- 発売日: 2001/06
- メディア: 単行本
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