こわれゆく世界の中で

こわれゆく世界の中で』(2006/英=米)をレンタルで鑑賞。再開発が進むロンドンの一地区を舞台に、ある二家族を軸に展開するヒューマンドラマ。主演ジュード・ロウジュリエット・ビノシュは歳を重ねても相変わらずセクシー。そのほかの俳優たちも、こまかい所作までみごとに演じている。

大人の映画だねえ。こういうの大好き。比喩的なセリフと感情をあらわにした直接的なやりとりのバランスが、静謐な物語にアクセントをあたえている。15年前からあたためてたという脚本・監督を担当したアンソニー・ミンゲラの構想がきっちりと結実したといえるだろう。

人は正直に生きることはとても難しい。というより、「正直に生きる」ためには自分の本心を知る必要がある。本心とはなにか? 自分自身が求めているものはなにか? それを知ること、理解することはじつはとても困難なことだ。

多くの人が自分を見失っている。誰もが見失っている。他者との軋轢のなかで、破壊と再生のなかで、少しずつ光がみえてくる。見えては闇へと消えていく。それでも人は闇のなかで他者と手をつなごうと、前へ、前へ、進む。

この映画は建築デザインが重要な要素を占めている。移民問題もそうだ。ひょっとしたらMacファンにはたまらない作品かもしれない。カメラワークは落ち着いていて、だいじな部分にきっちりとフォーカスしている。いい映画だ。

こわれゆく世界の中で [DVD]

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