丹下左膳餘話 百萬両の壷 (1935/日) ★★★★

yodaka2004-09-23

京都文化博物館にて山中貞雄監督作『丹下左膳飴話 百萬両の壺 [VHS]』を鑑賞。さいきんトヨエツ主演でリメイクもされた戦前の日本映画黄金期の傑作ということで期待して会場におもむくと、上映前の黒木和雄監督(『父と暮せば』('04)、『美しい夏キリシマ』('02)など)のトークショーの時点で、すでに大入り満員。立ち見なんて子供のころのジャッキー・チェンの映画以来かもしれない。

70年も前の映画だが、これはほんとにおもしろい人情喜劇だった。過去の名画とよばれる映画には退屈させられることもめずらしくないのだが、これはまったくそういったところがない。会場からも何度となく笑いが起こる。「新選組!」にはコメディ色のつよいおもしろい回がたまにあるが、その三谷脚本も真っ青の一級の娯楽作で、今の若い世代にだってぜんぜん通じるだろう。

監督の山中貞雄は今作を生み出したころ、まだ若干25歳というからおどろき。日中戦争に徴兵されて29歳のときに中国戦線で病死したこともあって、現存する彼の作品は3つしかない。トークショーのなかで黒木和雄監督は、日中戦争を批判的に回顧する日本映画がないことに忸怩たる思いがあるようなことをおっしゃっていたが、山中貞雄のような才気溢れる人物が若くしてその命を散らしてしまったことの損失の大きさが理解できる傑作だった。