心身の霧散という感覚

ノルウェイの森 下 (講談社文庫)』を読了。自分にとってはかなり毒気を含んだ小説だったらしく、めずらしく不安定な精神状態に陥ってしまった。さまざまな事象から距離を置いて、どうにか危ういバランスを保っていた感覚がそのバランスを急にうしない底がぬけたような。

「無意識下のストレスがたまってたんじゃないの?」という友人の指摘はそのとおりかもしれない。小説がトリガーになるなんて初めての経験だ。

「自分に同情するな」と彼は言った。「自分に同情するのは下劣な人間のやることだ」「覚えておきましょう」と僕は言った。そして我々は握手をして別れた。彼は新しい世界へ、僕は自分のぬかるみへと戻っていった。

他人にまでとやかく言うほど傲慢ではないが、永沢の忠告は前から自分自身に言い聞かせてきた忠告そのものだった。しかしそれがほんとうに正しいことなのかどうか、よくわからなくなっている。