ハウルの動く城 ★★★★ 3.8

yodaka2004-11-22

京極東宝で『ハウルの動く城』(2004/日)を鑑賞。『風の谷のナウシカ』や『もののけ姫』や『千と千尋の神隠し』のような文明批判や文化の系譜を含んだテーマ性が前面ににじみ出たようなものではなく、『天空の城ラピュタ』のように血湧き肉踊る純粋な冒険活劇ともちがう。どちらかといえば『魔女の宅急便』や『となりのトトロ』のような身近な日常を描いたちいさな物語に近いような印象を受けた。

二国間の戦争のはざまで奮戦するハウルの姿から反戦らしいテーマ性を導きだせないこともないが、『ハウルの動く城』はソフィーとハウルのファンタジックなラブストーリーが本筋で、思想性らしきものは中和されているといってよく、西欧風の街並や機械や少女への愛着にあふれていて、宮崎御大の趣味趣向が詰めこまれているといった点では『紅の豚』にいちばん近いのかもしれない。

木村拓哉は思いのほかハウルにしっくり合っていた。倍賞千恵子は18歳の娘と90歳の老婆役を器用に演じ分けていたが、18歳のソフィーではしっくりくる部分もあるが、そうでない部分もあって、やはり別々の配役を置いたほうがよかったかなという印象。うまいんだけどね。

これといったカタルシスは得られなかったが、ファンタジーへのストレートなアプローチと若さと老いへの優しい視線が感じられてなかなか好感のもてる作品だった。