物は言いよう ★★★★★

物は言いよう

物は言いよう

斎藤美奈子物は言いよう』を読了。本書は、セクハラ、性差別にひっかかる公(おおやけ)の発言を集めて、いったいどのあたりがFC(フェミコード)にひっかかるのか検証・解説。プライベートな場はともかく、公の場での発言には気をつけましょうね、とソフトに忠告。男も女も現代社会の性差別現象をかんがえるうえで、とても参考になる実用的なガイドブックだ。

フェミニズム? ジェンダーフリー? うさんくさいなあと反感をもった皆さん。あいや待たれい。興味がないならともかく、先入観でこの本をスルーするのはあまりにもったいない。ユーモアたっぷりでとにかくおもしろいのだ。店頭でみつけたら、せめて目次だけでも見てほしい。

ちなみにフェミニストといえば、 モテないきつめの年配女性で、男のやることなすことに言いがかりをつけるような人たちだとか、ジェンダーフリーといえば男女の性差をすべて無効化しようとする過激思想だという、保守論壇の影響をうけた言説を、自分はつい昨日までなかば本気で信じていた。

しかしそれらはほとんど誤解に基づいていることが本書を読めば納得できる。批判の多くは「ジェンダーレス」と「ジェンダーフリー」をごちゃまぜにし、勝手に妄想をふくらませて、いもしない仮想敵を攻撃しているのだ。もう目からウロコの連発である。じぶんがいかに性差を前提にしなくていい場面で、男性性を機軸に物事をとらえていたか思い知った。「おれは女性には理解があるほうだよ」と自信たっぷりな男性諸氏も一度チェックしてみてほしい。その自信、吹っ飛ぶかもよ。