バッドサンタ ★★★☆ 3.6

ここは社会問題を考えるサイトじゃなくて映画雑記サイトです! と自分に言い聞かせつつ、京極弥生座にて『バッドサンタ』(2003/米=独)を鑑賞。コーエン兄弟が製作総指揮に携わり、青春モラトリアムの傑作『ゴーストワールド』を撮ったテリー・ズウィゴフが監督を手がけたオトナのクリスマスストーリー。主役はビリー・ボブ・ソーントン演じるサンタクロース。ただのサンタじゃない。子どもに悪態をつき酒におぼれ所かまわず女とファックし毎年クリスマスシーズンに金庫破りを繰り返す自堕落なコソ泥だ。

物を収奪するサンタという逆転の構図に、ひとりの太った冴えない男の子に慕われることによって、ある種まっとうな「贈与するサンタ」への再変換という流れにはあまり意外性はないが、やさぐれたハートウォーミングともいうべきいい具合の屈折さ加減がすれたオトナにはなかなか心地よい。

「誰にもコケにされるなよ。とくに自分にはな」というメッセージは、「自己肯定」という言葉に置き換えるととたんに陳腐にもなるが、コソ泥サンタ自身がふとっちょ君と出会うまで持ち得なかった最低限の自尊心の行方に象徴される「ピンクのゾウのぬいぐるみ」を思い起こすにつれ、なかなかいいもんだなと素直に受け入れられる。

皆が「僕の彼女を紹介します」のような恋愛映画に流れるなか、ガラガラの映画館でブラックユーモアの効いた映画を落ち着いて鑑賞するあたりにちょっとした場末の醍醐味があった。