ミリオンダラー・ベイビー ★★★☆ 3.7

yodaka2005-06-04

MOVIX京都にて『ミリオンダラー・ベイビー』(2004/米)を鑑賞。夢と強い意志を持つ女に、技と経験をそそぎ込む老トレーナー。ふたりの擬似的な「父」と「娘」の関係のなかで、最終的に「娘」に果たすべき「父」の役割とはなんなのか。そのさまよえる父性の所在に焦点はしぼられていく。首尾一貫して「主体的」であり続けた強い「娘」であるマギー(ヒラリー・スワンク)とは対照的に、フランキー(クリント・イーストウッド)は迷いと贖罪のなかで揺れ動く。

見応えはあった。が、いまひとつ乗り切れなかった。前半はマギーの物語だ。「自己実現」たる対象を持てず、「自己実現」という言葉そのものに対する懐疑を抱いている自分に、マギーはあまりに遠くまぶしい存在だ。後半、フランキーの立場にも立てない。どうも腑に落ちない違和を抱えたままエンディングをむかえたような気がする。これは自分のモラトリアム的心性に起因するのだろうか。

客入りはそこそこ。物語が変転した直後からエンディングまでずっと、隣席の女性の鼻をすする音が聞こえた。