サマリア ★★★ 3.3

yodaka2005-06-05

京極弥生座にて『サマリア』(2004/韓国)を鑑賞。援交についての言説は日本では消費されつくした感があるが、『サマリア』において焦点が当てられるのは、買う側の男たちと「父」の在りように寄る部分が大きい。表向きの道徳の裏側に潜む男の抑圧的な視線を、扇情的に暴きたてた『悪い男』(2001/韓国)や『魚と寝る女』(2000/韓国)と通じるところはあるが、そのあたりのコントラストは『サマリア』においてはそう明らかなものでもなく、いまひとつピンと来なかった。

ちょっとネタバレになるが、援交を家族の前で暴露されたくらいで即座に命を絶つものだろうか。性道徳のあり方を問う時、韓国のことはよく知らないが、日本に置き換えて考えた場合、これほどの軋轢のドラマを生む必然性、というものがない。日本の「現実」における「悪」の不在は、キム・ギドクのスキャンダラスな「虚構」さえも印象の薄いものにしてしまう感すらある。個人的にはふたりの少女の在りように焦点をしぼって物語を展開してほしかった。

客入りは自分をふくめて7人だった。今もっとも注目されるべき映画作家キム・ギドクの作品としては少々寂しい。