海辺のカフカを読み終えた

海辺のカフカ』を読了。今までの村上作品の系譜から一歩たりとも踏み外すところがなくて、読みやすいんだけど、どうも物足りない。「もちろん」なんて受け答えをする15歳がどこにいる、なんて無粋なつっこみはまあなしとしても、うーん、印象に残ったのは大島さんがゴリゴリの古風なフェミニストを図書館から追い払うくだりだけだったかなあ。

物語自体がアイデンティティの喪失と回復の道程を描いたのメタファーそのものなんだろうけど、最近はどうもそういった枠組をあいまいにしていくような浮遊感にコミットできない。読みかけの山本文緒『ファースト・プライオリティー』はさまざまな31歳の女性の日常を描いた短編集だけど、こういった小説のほうが今は断然おもしろく感じる。なんなんだろう。32歳あたりを境にして自分のなかで何かが決定的に変わったような気がするが、それもあと数年経ってふりかえってみないとわからないかもしれない。案外なにも変わってなかった、なんてことは往々にしてあるから。