個性はいかにして立ち上がるか

金さえあれば何でも手に入る社会は、何を手に入れても個性を証明できない社会である。そのためにこそ人々は個性の獲得に躍起になる。しかし、個性とは真空の中で生まれるものではない。経済価値やお金に還元される均質な土壌には育たない花なのである。

一方、環境は、実に多様な「ニッチ」を与える。それゆえ、環境の中で生きるとき、つまりニッチの多様な特殊性によって育まれるとき、人は必然的に「少数派」として文化形成することになる。『ウンコに学べ!』P.155

ニッチ(niche)とは「はまりのいい場所」、「居心地のよい環境」という意味の生態学上の言葉。さまざまな生物種は草原や森や川縁や深海などさまざまな地表をニッチとして棲み分けている。人もまたしかり。そして人は自然環境のみならず多様な文化・思想に支えられた社会環境をニッチとして生きることによって初めて個性が立ち上がってくる。