吉田修一の『パレード』はすごい

パレード (幻冬舎文庫)

パレード (幻冬舎文庫)

たしか「これおもしろいで」とか「これおすすめ」みたいな一言だけだったと思う。日曜の夕方に彼女と太陽に寄ったときにセンセイからこの『パレード』をなにげなく薦められた。ちょうど立て続けに読んでいた江國香織の小説がどうにも読み進まなくて、ああ俺はこの人の小説とは相性がわるいのかなあと思っていたところだった。

男女のルームシェアが題材になっている、ということだけ聞き出して、角田光代の『幸福な遊戯』や『ピンク・バス』のような恋人でもなく家族でもなく、はっきりと友達だとも言えない微妙な関係が描かれているのかな、と想像して読み始めた。

想像はたしかにあるていど当たっていた。そしておもしろかった。電車のなかでニヤけながら本を読んでいる自分の姿はひょっとしたら滑稽だったかもしれない。ふだん行き帰りの電車以外であまり本を読まない僕が自宅で次の日の起床時間を気にしながらもなかなかページをめくることをやめられなかった小説はひさしぶりだ。とにかくおもしろかった。すごくおもしろく読んでいた。しかし単にそれだけではなくグロテスクでサプライズだった。ひっくりかえった。とにかく「すげえおもしろい」でとどまらなかったとだけ言っておこう。