72年生まれ、正規雇用経験なしでもお互いどうにかこうにか生きている

ほぼ一年ぶりに高校の同級生Tに会った。とりあえずメシでも食いながらということでラーメン屋でお互いにこの一年をふりかえる。

Tは現在無職。高校卒業後は20代半ばまでほぼのらりくらりとしたニート状態。その後ようやく離島の民宿や地方の工場でバイトや派遣として一年の半分くらい働いては貯金で長期滞在の旅をくりかえすという放浪生活でいまに至る。今回は長野の工場でで2〜3ヶ月勤めて帰ってきたらしい。

私は20代半ばまでフリーターでそれから数年は半ニート半ひきこもり時々工場労働のような日々を送り、30過ぎてから、とあるNPOに拾われて今年は薄給ながら実家で暮らす分には十分な収入を得ている。

そろそろ地元の工場に腰を落ち着けようかなあとか、工場の派遣なんかに大卒の連中が流れてきたら俺らの仕事取られるよなあ、みたいな話をしつつ近況を簡単に伝え合ったのちにTの恋愛話になった。なんでも沖縄の離島に旅で滞在しているころに滞在先の民宿でバイトをしていた8つ下の女の子と仲良くなったそう。その子も関西在住だったのでこっちに戻ってから友達関係を続けていたのだが、どうやら会ったころからTに気があったらしく彼女から付き合ってほしいと告白された。T曰く「友達関係が壊れるのも嫌だから」という消極的理由でOKしたのだが、やっぱり恋愛はめんどくさいので友達関係に戻したいらしい。

「30過ぎでおまえみたいな経歴で将来性ゼロの男に惚れてくれる女は今後もういないぞ」と言ってみたら、まあそれはたしかにそうなんだけどなとやる気なさそうに答えた。もともと恋愛願望が薄いタイプで結婚願望も皆無なのでこれ以上言ってもしょうがない。

お前はどうなんだと聞かれると、そういや当時大学生で就職も決まっていた9つ下の今の彼女も、30過ぎの無職で将来性ゼロの自分のどこが気に入ったのか向こうから告白してきてくれた。Tに惚れた彼女も自分の彼女もこんないいかげんなオッサンたちのどこがよかったのか意味がわからない。Tも自分も別段男前でも恋愛経験が豊富というわけでもないし、コミュニケーション能力に長けているわけでもないし実家が資産家というわけでもない。人生とはわからないものである。

それから話が同じ同級生のBの近況に移った。Bは正社員の経験はなくほぼ工場の派遣オンリー。今はマンション買って引っ越したらしい。なんで工場の派遣でマンション買えるねんと聞くと、派遣でも同じ事業所に5年以上勤めていたらローンが組めたらしい。まあ物件は700万と格安だけど。キャッシュで買えるほど貯金はあったらしいが、蓄えがなくなるのが嫌でローンを組んだようだ。派遣だけでそんだけ貯めたのかよ。すげえな。

Bはローンが組めたからという理由でマンション購入後すぐに工場を辞めた。二度驚いた。専業主婦の嫁さんとローン抱えてどうするんだ。Tによるとホビー雑誌から依頼されてプラモデルを1体作ると10万近い収入になるらしく今はそれで生計を立てているらしい。Bは自他ともに認めるデブオタで嫁も模型店で生涯一度のナンパでゲットしている。嫁はけっこうかわいいが生粋のオタクだ。

自分たちはバブル崩壊後の就職氷河期のあおりを受けた世代で、おまけにどいつもこいつも正規雇用の経験は皆無かそれに近いが、どうにかこうにか特別の悲壮感もなくしぶとく生きている。