猫とオカンと東京タワー

朝方車がびゅんびゅん行き交う通りで猫が腸を撒き散らしながら横たわっている姿が飛び込んでくる。目をそむけながらバス停に急ぎ足でむかった。

我が家の老猫はあいかわらずえさをほとんど食べない。歯がだいぶ抜けて歯槽膿漏になったせいもあるだろう。ここまでの高齢の猫を飼った経験がなかったので、口のなかの状態に元気なころから注意が向かなかったことがくやまれる。口臭がし出したときにすぐにケアしてやるべきだった。

動物病院で1回3800円の栄養剤がふくまれている注射を数日置きにしてもらっているおかげなのか、痩せて足腰は弱って甘えたになったもののいまのところけっこう元気にしている。この調子ならしばらく大丈夫かもしれない。「地獄の沙汰も金しだいやなあ」と父。パチンコでなけなしの年金をすって金がないらしく毎回治療費を請求されるのが薄給の身にちとしみる。

彼女から借りたリリー・フランキー東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~』を読み終えたあとに、テーブルに無造作に置かれた年賀状が目に留まった。離れて暮らしている母から届いた父と僕あての年賀状だ。「人生6回目の年女になりました。今年でやっと仕事から解放されます」という一文がなにやらものすごく感慨深いものに見えてくるのはこの本の力だろうか。