フランス映画祭で一本観てみた

TOHOシネマズ高槻で開催されているフランス映画祭のなかの1本『イン・ヒズ・ハンド』(2005/仏)を鑑賞。保険会社に勤める人妻(イザベル・カレ)が顧客の獣医(ブノワ・ポールヴールド)と親密になっていくのだが、独身の若い女性ばかり狙う連続殺人事件がふたりの関係に大きな影を落とすことに……。監督アンヌ・フォンティーヌ。

これがハリウッド映画だったなら、殺人犯はいったい誰なのか、そしてヒロインの運命は? みたいな筋書きを徹底的に重視し、伏線張りまくってスリリングな音楽や効果音を挿入しつつ、ラストはすったもんだのアクションもまじえた派手なサイコホラーに仕上げる、かもしれない。

さすがにそのあたりはフランス的、なのかどうかしらないがずいぶんと毛色のちがったアプローチをしている。男女のややウェットな関係に焦点をあてて、人の愛し方がわからない不器用な人間たちの苦悩をしっとりとえがいている。器用に女を口説く中年獣医がじつは童貞だったとか、人妻の同僚はさまざまな男とつきあうものの2ヶ月以上関係が続かない。恋愛関係がほかのだれかと代替可能であることに気付き、恋愛に関係の唯一性を見出せないのだ。

このあたりをもう少し軽妙な会話劇で展開してくれたらおもしろかったんだけど、ちょっと強引で雑な仕上がり。この監督の作品は『ドライ・クリーニング』しか見たことないけど、それと比べて出来は落ちるなあ。★★★

平日の夕方の回ということもあってか観客は40人に満たずちょっとさみしかった。