高校時代

今頃ようやく『カラマーゾフの兄弟』を読んでいる。夜になってレンタル屋に『砂と霧の家』(2003/米)を返しに行く。とても見ごたえのある良質の悲劇だった。その足で『オープン・ウォーター』(2003/米)と『モンスター』(2003/米=独)と『空中庭園』(2005/日)を借りる。最近ハッピーエンドを期待できないような映画ばかり選んでいる気がする。

深夜にやたら久しぶりに知り合いの子からメールが入る。あー……どうせまたしょうもない男にひっかかったとかいう相談だな……。聞き役に回って長話を聞く心のゆとりがないので無視。あ、ハルヒが始まった。あいかわらずおもしろい! どれだけ引き出しあるんだこのアニメは。

そういや高校生の頃に長門みたいな感じの子に惚れてたっけなあ。黙々と本を読むその子の姿がなんだかとても高貴に見えたのは若き日の妄想が成せるワザだったのか。同じ部だったんだけど、部活にきわめて不まじめだった自分が足しげく部室に通ってたのは、半分以上、いや完全にその子に会いたい一心。しかし女子とどんな会話をしていいか皆目見当がつかない。好きな子ならなおさら。こっちから話しかけるなんて清水の舞台から飛び降りる500倍の勇気がいるのでどだい無理。

『今日こそ話しかけるぞ…話しかけるぞ……』と自分に言い聞かせるもまったく会話もできずため息をつきながら下校する日々が続き、いつのまにか『今日は視線をトータル3秒は合わせるぞ……』とどうしようもない低レベルに設定変更しつつ、チラチラとその子を盗み見する若かりし俺。一言二言会話を交わせただけで有頂天。わー、きもかわいい。きっと傍目に挙動不審だっただろうなあ。最終的にはどうにかその子を離れ校舎の木の下に呼び出して告白したけど、まあ当然ふられる当たり前。 

高校時代は大人たちから「いまが一番いい時期やね」なんて言われていたが、ただただ平凡で無為な日々が過ぎていくだけで、光り輝く青春時代の足音なんてどこからも聞こえてこなかった。あの頃に『耳をすませば』なんて見てたら死にたくなったと思う。ハルヒだったら? きっと夢中になってただろうなあ。いや今でも十分夢中になってますけど。