角田光代『トリップ』を読んで

角田光代『トリップ』を読了。角田光代の小説はこれで最低でも8冊は読んだことになりますね。もうあれですよ。ただのファン。早く『対岸の彼女』文庫化されないかなあ。

『トリップ』は東京のとある近郊のなんでもない街を舞台にした短編集です。主人公は小学生もいれば、太った中年女もいれば、ストーカー男もいるのです。まあそれぞれ色々な事情を抱えているわけですが、どうにかこうにか日常生活を破綻させずに、現実と折り合いながら、時に逃避しながら、なんとも表現のしようもない閉塞感なんかを抱えながら生きているわけです。

解説にもあるとおり作家性に幅が出てきたな、と思わせる一冊です。地に足をつけた幸福とも不幸とも言えない、なんとも一言で言語化できないような「あっち」と「こっち」のあいだを表現するのがうまいですねこの人は。「ああ、この作家は日常生活をていねいに生きてるんだろうな」と思わせます。

トリップ (光文社文庫)

トリップ (光文社文庫)