病からの再生

うつ病を患って何年経っただろう。この病が完治するということは、たぶんない。そう感じるようになった。これはもう根本的に生き方・考え方を問い直さざるを得えない。

重いうつ病を患った作家山本文緒が語っていた。『うつを患った方が「元の自分に戻りたい」と言うのを聞くが、元の自分には戻れない。どんな病気でも良くも悪くも嫌でも新しい自分になってしまう。生まれなおしてしまう』と。

「うつ」が「治る」ことについて、専門医は多くの場合、「治癒」という言葉は使わずに、「寛解(かんかい)」という専門用語を用います。この「寛解」とはremissionの訳語で、症状が緩和され病気の勢いが治まった状態を指す言葉で、身体疾患では白血病などでよく使われる表現です。

つまり、これは完全に治った状態を指すのではなく、病気の勢いが衰えて症状が出ていない状態を示す言葉です。さらに言えば、再発の危険性が残っていることを視野に入れた概念だということになります。

(中略)

このような言葉からもわかるように、「うつ」からの本当の脱出とは、元の自分に戻ることなのではなく、モデルチェンジしたような、より自然体の自分に新しく生まれ変わるような形で実現されるものだと言えるでしょう。repair(修理)のような治療では、どうしても再発のリスクを残してしまう限界があるのですが、reborn(生まれ直し)あるいはnewborn(新たに生まれ直す)とでも言うべき深い次元での変化が、真の「治癒」には不可欠なのだと考えられます。
http://diamond.jp/series/izumiya/10004/

ほんとうに症状が重いときは生まれ直しだの、それどころじゃないんだけど、症状がやわらいで小康状態のときにある種の開き直りが必要だとおもう。

うつに限らず病は時として思い描いていたライフプランを根底から破壊する。破壊から再生したとき、それはもう過去の自分ではけっしてありえない。死ととなりあわせのこの生をどう扱うか。自分自身、他者との、社会との関係のなかで今までの問いの立て方を見直す必要があるんだろう。