サッカーファンなら読んで絶対損はない戦術理解を深める一冊

ひいきのチームの勝ち負けだけに一喜一憂するレベルから、もう一歩すすんだサッカー観戦の醍醐味をひき出してくれるのがこの4‐2‐3‐1―サッカーを戦術から理解する (光文社新書)だ。

本書は「サッカーは監督で決まる、サッカーの主役は監督だ」としるしているように、監督がなぜその布陣を選んだのか、その戦術がチームにどれほど絶大な影響をあたえているのか、サッカー監督の采配がチームの浮沈を左右するつよい相関関係をあざやかに描きだしたサッカーファンのための教科書だ。

たとえば記憶に新しいドイツW杯で、オーストラリア代表監督として挑んだフース・ヒディング監督がいかにしてジーコ・ジャパンを撃破したのか。負けるべくして負けたジーコ・ジャパンの本質的な問題とはなんだったのか。その理由を欧州における布陣のトレンドの歴史背景などをからめて、図解つきで明快に解き明かす。

日本でサッカーが語られるとき、センターバックサイドバックボランチ・攻撃的ミッドフィルダー・司令塔・フォワードなどの単純で固定的な役割分担でフォーメーションがイメージされることが多いが、現代サッカーはもっと流動的で選手は複数のポジションを担っている。そのことはファンもなんとなくわかっている。

しかしめまぐるしく攻守が入れ替わるサッカーという競技のなかで、いったい何が勝因なのか敗因なのか理解することは難しい。勝ってももやもやとストレスの溜まる試合のなにが問題だったのか、負けても実のある敗戦とはなんなのか。あのチームは大した選手も揃えていないのになぜ強いのか。スター選手を集めているのになぜ勝てないのか。その答えを探る一助に本書はまちがいなく使えるだろう。

4‐2‐3‐1―サッカーを戦術から理解する (光文社新書)

4‐2‐3‐1―サッカーを戦術から理解する (光文社新書)