久しぶりに満点をあげたくなるような小説 - 荻原浩『ママの狙撃銃』

ママの狙撃銃 (双葉文庫)

ママの狙撃銃 (双葉文庫)

荻原浩『ママの狙撃銃』を読了。遅読で集中力の続かない私が久しぶりに一気読みできた小説。ほんとうにおもしろかった。

主人公はヨーコ。優しいがちょっと頼りない夫と反抗期をむかえた中学生の姉、まだ幼稚園に通う天真爛漫な弟の4人家族の生活を守るごく平凡な主婦だ。しかしヨーコには大きな秘密があった。彼女は少女時代をすごしたアメリカの祖父から伝授された狙撃の名手だっだ。ヨーコの過去はけっして誰にも言えない秘密があった。そんなある日、ヨーコのもとにある「仕事」の依頼が舞い込む。とまどいつつもヨーコは家族を守るために祖父の忘れ形見であるレミントンM700をふたたび手に取ることになる──

荻原作品には『なかよし小鳩組』『神様からひと言』『メリーゴーランド』などのユーモアたっぷりのサラリーマン小説や、『コールドゲーム』『噂』などの読者を震撼させるようなミステリやサスペンスなど、その作風の幅と完成度には目を見張るものがある。

『ママの狙撃銃』は典型的なホームドラマとハードボイルドの世界が渾然一体となって、過去と現在を巧みに織り込ませて二転三転する展開を読む者を混乱させずに流麗に描き出していく。

久しぶりに満点をあげたくなるような小説だった。