感じない男

森岡正博『感じない男』を読了。男のセクシュアリティに関する著者自身の体験から敷衍した考察。まずミニスカに欲情する男の心理について。ミニスカがキュロットと分かったときの幻滅という事態から、男は生身の女そのものではなくミニスカという構造それ自体に欲情しているのではないかという話。

つぎに男のオーガズム=射精という一般理解に対する疑義。射精がオーガズムであるというのなら、あの射精直後の空虚感は一体何なのか。ここにふだん男が目をそむけがちな性感に関するキーワードとなる「男の不感症」を見出す。三章は制服に惹かれる男の心理について。制服少女に対する関心の源泉の先には、学校という場と男自身のごつごつした身体からの脱出願望があるのではないか、と考察は進む。

四章はロリコン男の心理について。ここでは10歳未満の少女に性的関心を示すペドファイルロリコンを峻別して後者にのみついて考察している。このロリコンの定義にはモーニング娘。などアイドル好きの男も含まており、静かにひろがる社会のロリコン化を喝破する。最後に、男が実は「自分の体は汚れている」という心理から、その反動としてより男らしい一般的にイメージされる男性性の獲得へ向かう道筋をたどるとして、その歪んだセクシュアリティの自覚と修整をうながしている。

著者の実感と自分の実感とはかけ離れた部分も多々あるが、大筋で納得のいく論も多い。「自分の体が汚い」という感覚は、中学生の頃から体がより男性的になるにつれてどんどん強くなり、その感覚はいまだに払拭しきれていないように思う。それが自分のなかにどういったセクシュアリティを育んだか。そういったことを考えるいい機会になった。

感じない男 (ちくま新書)

感じない男 (ちくま新書)