エレガントなフォルムのキュートなバッタ

木工イベントに向かうために電車に乗る。京都市内に入ってしばらくしたあたりで、野球のユニフォームを着た少年たちがワラワラと乗ってきて、埃と汗が混じったにおいがむわっと鼻先に伝わってきた。静かだった車内がとたんににぎやかになる。そんななか小学高学年とおぼしき少年がとつぜん「うわっ! 虫や!」と騒ぎ出した。

見ると、あれは形からしショウリョウバッタだろうか、かわいらしいバッタが床にちょこんと居座っている。「おれ虫きらいやねん! だれかなんとかしてくれ!」「おれもあかんて!」「だれか足で踏んでくれよ!」「きもちわるいて!」と少年たちはキュートなバッタ一匹に腰を引いて大騒ぎしている。そのなかでぬぼーっとした雰囲気の背の高い少年がややスローにかつスムーズにバッタを滞りなく踏み殺し、野球少年たちは安堵して雑談にもどった。