電車

迷いこむアシナガバチ

ひるすぎの電車に乗ると暑苦しさを感じたので上着を脱いでシートに腰をかけた。すると前席から大きな音で着うたメロディが幾度となく聞こえてくる。上下黒のだぼついたジャージ姿の茶髪ガールがケータイをいじっている。たぶん倖田來未かなにかをメールの着…

二年生と三年生、それから

夕方の駅のホームに電車が滑り込み、家路に着く人たちがどっと降りてくる。そのなかで女子高生四、五人がはしゃいでいた。それを横目に「若いなあ」とつぶやいたのは僕ではなくて、同じ制服を着た二人連れの女子高生だった。どうやらはしゃいでいたグループ…

夏とバッタとクワガタムシ

ホームの端。一羽のカラスが口を半ば開けながらななめ上方に頭をむけ微動だにせずたたずんでいた。まるで彫刻のように。帰りにまた京都駅伊勢丹でラーメンとギョウザを食す。書店で山本文緒『ファースト・プライオリティー』とベルンハルト・シュリンク『朗…

鉄道マニアと老夫婦

「なんのマニアか知らんけど平日の昼やで」と非難めいた口調でうしろの席のおじいさんが隣に座るおばあさんにつぶやいた。夫婦だろう。車窓からの風景。駅のホームで鉄道マニアとおぼしき男たちが20人ほど熱心にカメラをかまえていた。レアな電車でも通過す…

パンチラ

行きの電車内で小説を読んでいると、上はノースリーブ、下はひざ上30センチ以上はあるであろう超ミニのデニムスカートをはいた長身の女性が途中の駅から乗ってきて、僕の向かいの座席に座った。髪はロングのストレート。日本人ばなれしたすらっとした流線型…

車内は時に戦場と化す

夏の陽射しに数時間さらされたあの紙パックのぬるいカフェオレのせいだろうか。帰りの電車で僕は今年最大級のビッグウェーブにさらされた。ちょうど高槻駅を出発した直後だ。つぎの山崎駅まで必死に耐える。遠い。果てしなく山崎が遠い。流れる車窓の風景は…

エレガントなフォルムのキュートなバッタ

木工イベントに向かうために電車に乗る。京都市内に入ってしばらくしたあたりで、野球のユニフォームを着た少年たちがワラワラと乗ってきて、埃と汗が混じったにおいがむわっと鼻先に伝わってきた。静かだった車内がとたんににぎやかになる。そんななか小学…

噂をすれば再会

オープンミーティングのあとの酒の席で、「ディスコミュニケーションスキル」という謎の新語が誕生した。とにかくどんな問いかけにも「ビール!」と答えればよろしい。その席で「酒類製造関連会社のバイオ部門で働いている友達のヨメさんがいる」という話を…