二年生と三年生、それから
夕方の駅のホームに電車が滑り込み、家路に着く人たちがどっと降りてくる。そのなかで女子高生四、五人がはしゃいでいた。それを横目に「若いなあ」とつぶやいたのは僕ではなくて、同じ制服を着た二人連れの女子高生だった。どうやらはしゃいでいたグループは二年生で、彼女たちは三年生らしい。
僕から見るとどちらも一回り半も歳のちがう単にかわいらしい高校生なのだが、たしかに二年生と三年生というコントラストで捉えると、三年生の彼女たちの話し方や顔立ちや雰囲気がとても大人びて見えた。
ちょうど夏目漱石の『それから (新潮文庫)』を帰りの車内で読み、主人公である遊民の代助にいたく共感していたところだった。きっと卒業後の進路のことを真剣に考えているであろう彼女たちを見て、仕事をしつつも組織や人のしがらみを嫌い、無目的に人生の波間を漂う自分のほうがよほど子供っぽいのではないかと内心わずかに苦笑せざるを得なかった。
旅支度間近のツバメが群れるようになった。裏庭やそばの畑から聞こえる虫の音が秋の到来を告げる。夜中はめっきり涼しくなった。こんな風にのんきに秋の気配を喜ぶ僕にもいつか世界が真っ赤に覆われるような事態が訪れるのだろうか。
- 作者: 夏目漱石
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1985/09/15
- メディア: 文庫
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