低学歴問題としてのニート

「ご近所の底力」でニートを取り上げていた(http://www.nhk.or.jp/gokinjo/backnumber/051013.html)。ジョブシャドウイングの試みが紹介されていたけれど、あれは受け入れ先の負担も少ないしなかなか面白いかなと思う。で、あらためてニートって言葉はなんだろうなと考えてしまう。あまりに多くのことを内包しすぎるせいか、あれじゃやっぱりたんに「働かない若者」として道徳的批判に晒されちゃうのかな、と。たしかにニートの実像というのは多様ではあるんだけど、個別に論じなければならない問題をニートとか多様という言葉ひとつに回収しちゃうことで見えにくくなることもあるんじゃないだろうか。

若者自立塾シンポジウム基調講演『若者の今と社会的自立の支援ネットワーク』(共同の發見 2005.9 No.158)での宮本みち子氏の発言をちょっと引いてみる(強調は筆者)。

欧米の先進国では、若者の困難が、経済的に困難な階層の問題だというのがもっぱらの共通認識なのに対し、日本で「ニート」「NEET」とマスコミが書くイメージは、比較的恵まれた高学歴層の出身の若者であり、だからこそ“働く意欲のなさ”が盛んに問題にされ、「環境はあるのに何で彼らは働かないのか」という議論になっているのです。欧米諸国ではニートとかアウトサイダーとか、あるいはアンダークラスという言葉で問題にされ、政策のターゲットになってきた階層は、低学歴・低所得階層です。日本の場合には低学歴・低所得層問題の認識は非常に遅くて、最近になって少し出てきたように思います。

今年になってから内閣府でも全国的な規模の調査をし、それから日本労働政策研究・研修機構もかなり大規模な統計の再集計をやりまして、そこで客観的に出てきたのは、ニート・フリーター・失業者は学歴構成上、階段状になっている。つまり正規雇用の人たちが学歴が一番高く、その次にフリーター、3番目に失業者、4番目がニート、というように、低学歴問題だということが客観的にわかってきたわけです。マスコミも若干反省をして、書き方が少し変わってきたかなという感じがしますが、でもまだ本当のところはわかっていないように思います。『イメージと実体のズレ──低学歴・低所得層とニート

低学歴ゆえの選択肢の幅の狭さ、不安定就労、フリーターから無業者への転落。社会からの孤立。自分の過去の経験ともオーバーラップして他人事ではない。