ニートって言うな!

「ニート」って言うな! (光文社新書)

「ニート」って言うな! (光文社新書)

ニートという言葉を通じて一般に広まった「働く意欲のない今どきの若者」もしくは「凶悪化する少年犯罪」といった針小棒大なネガティブイメージが、若者の実像といかにかけ離れているかということを三者三様に論じた好著。社会の中でごく「普通」に生きている若者たちがニートとして一括りにされ、また一方では若者たちがこうむっている厳しい雇用環境は放置されたまま、親の育て方や当人たちの内面の問題に責任転嫁されつつ肥大する若者論のいかがわしさが浮きぼりにされている。

ニートをめぐる言説の多くが、社会の不満や憎悪を他にそらすためのスケープゴートとして利用され、また若者同士を誤った分断に導いている。そんな印象を持った。300ページと新書にしてはボリュームのある部類だが論旨が明快で一気に読み終えた。「下流社会」なんていいかげんな本がベストセラーになっているが、現代社会の様相の一端をつかみたいならこっちのほうが断然おすすめ。