これっぽっち

右手に一棟だけそびえる高層マンションを見やり、あそこから飛び降りれば確実に死ねるだろうか、とぼんやり考えながら自転車のペダルをこいで病院にむかう。近況を先生に話すと抗うつ剤を増量された。薬の問題なのだろうか。たしかにどうしても薬が必要な時期はあった。いまのそれは何かが違う。僕は仕事も含めて、こうして生きていることそれ自体にこれっぽっちの喜びも感じていない。なのにどうして生きつづけているのだろう。それは薬が解決してくれる問題じゃない。