孤独死と若者の未来

今日のNHKスペシャル『ひとり 団地の一室で』は、45年目を迎える千葉県松戸の団地でふえる孤独死を追ったドキュメント。いまの、そして将来の日本を暗示するおそろしい内容だった。

いったいどういった人たちがこの団地で孤独死におちいりやすいのか? 孤独死といえば70代か80代の高齢者をイメージしがちだが、じっさいには40代から60代前半の、老後前の比較的わかい中年男性がおどろくほど多い。

かつてニュータウンと呼ばれた豊かさを求める高度成長期の象徴は、高齢化にともない入居者はかつての半分以下となり、単身の入居を認めるようになった。新住民のほとんどがひとり暮しの男性で、複雑な事情をかかえた人も少なくない。

古くからの住民は高齢化が進んでいるが近所づきあいは密で支え合って生活している。しかし新住民は近隣とほとんど付き合いがない。そんななかで団地内で老後前の孤独死が続発した。孤独死が自分たちより若い世代に広がっていることに古くからの住民が衝撃を受け、団地に孤独死予防センターを設置する。スタッフの多くが団地の高齢者たちだ。スタッフがこまめにひとり暮しの男性の部屋を訪れ声をかける。73歳のスタッフの女性が意気消沈している60歳の男性を励ます。

ある孤独死のケース。発作で布団の横に倒れて死亡していたところを3ヶ月後に発見された62歳男性。フォークリフトの仕事を臨時で転々とするも収入はほとんどなし。部屋にはハローワークから取り寄せた20枚の求人票が散らばり、ハルウララの100円馬券があった。負け続けてもひたむきに走る競走馬に自分を重ね合わせていたのだろうか。

離婚、失業、病気……。家族と離れ気力もなくなり孤独のなかで閉じこもりがちの生活を送る多くの中年男性の姿は、階層の固定化がすすむフリーターの若者の将来を想起させる。高度成長期のような経済の恩恵を受けることもなく結婚もできないフリーター。その親世代が亡くなれば、こういったむきだしの貧困と孤独が多くの若者を襲い、さらなる孤独死の低年齢化をまねくことにもなりかねない。

フェイストゥフェイスの地域コミュニティを形成する旧住民たちの支え合いを参考にしつつ、若者同士または世代を越えた新たな形の関係作りを今のうちから探っていかないととんでもないことになるんじゃないかという危惧を抱いた。