この人と福祉を語ろう 〜作家・山本文緒〜

http://www.nhk.or.jp/heart-net/fnet/info/0712/71218.html
お! 山本文緒だ! NHK教育テレビ午後8時から。再放送は12月25日。

等身大の女性の恋・本音をつづってきた作家、山本文緒さん。その3年ぶりの新作「再婚生活」は長年患ってきたうつ病と向き合いながらの生活をコミカルにつづった日記風エッセーだ。
山本さんは大学卒業後、OL生活を経て1987年に少女小説作家としてデビュー。その後、1999年に作品『恋愛中毒』で吉川英治文学新人賞、続いて2002年には『プラナリア』で直木賞を受賞。そして再婚も果たした。プライベートも順風満帆!すべてを手に入れたと思った後、うつになった。
「うつ」と診断された当初は気持の持ちようでうつを克服できると思っていた山本さん。しかし風邪が治るようには簡単にはいかず、不眠、過眠・パニック障害と向き合う闘病生活はその後、3年ほど続いた。
心身共に病んでしまった山本さんを支えてくれたのは他ならぬ家族。闘病を通じて年下の夫との関係も、深まり、結婚の形も変化し、作家としての考え方も変わっていったという。
うつになったことで、まとってきたよろいを脱ぎ去ることが出来きたという山本さんに、闘病の日々を語ってもらいながら、うつについて考える。

追記:山本文緒語録メモ(自分のメモ用なので精確ではない)

2001年『プラナリア』で直木賞受賞。小説を書く事を最優先にして他の事を排除。「幸せがストレスに」。買い物に行けない。食事を作れない。1日18時間睡眠。不眠と過眠のくりかえし。入院。小説がアイデンティティー。文学賞・マンション・結婚相手すら「書けるわたし」が手に入れたもの。「書く事」を中断することで、生きる意味すらないと思っていた。

入院一ヶ月で退院。退院ハイみたいになった。もう完全に治った。なんでもできるという万能感。躁鬱の躁のような状態になっていた。動けることが嬉しかった。でもそのあととても疲れた。(←すげーわかる)

もうだめだという瞬間。パソコンを開くだけでぐらぐらした感覚。別居婚。一人きりの空間をキープして物語に入っていけるようなスペースが必要だと思い込んでいた。個人主義。自分以外は“他人”。家族も配偶者も“他人”。独立した“他人”。自分のことは自分で。あるていど距離を置いたほうが、人と人とは居心地がいいのでは、と思っていた。

しかし、一人で電車もバスも乗れない、身の回りのことができない。物理的に助けてもらうために王子(再婚相手)と同居。王子は以前と変わらず接してくれた。八つ当たりもした。

「書けるわたし」にアイデンティティを置いている限り、つきまとう苦しみ。小さい頃から自己評価が低かった。唯一、小説だけは人から褒められた。それにすがって生きてきた。

うつを患った方が「元の自分に戻りたい」と言うのを聞くが、元の自分には戻れない。どんな病気でも良くも悪くも嫌でも新しい自分になってしまう。生まれなおしてしまう。リセットボタンを押した貴重な経験。うつのおかげで自分の頑な所、幼稚な所がだいぶ取れたと思う。そのままの自分を受け入れる。

「しかしそれでは小説が平板になってしまうのでは?」という質問に対して→今までは自分の感情と重なり合う部分を滑り込ませていた。これからは他人の感情・気持ちも表現できる「本物のフィクション」を書いていけたらいいな。

(鬱と山本文緒の関連エントリ)

再婚生活

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プラナリア (文春文庫)

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